つみたてNISA(積立NISA)では、投資信託を用いて資産運用を行います。

投資信託を運用するうえで最も怖いのは元本割れになることかと思います。ですが、その次に怖いのは繰上償還です。

つみたてNISAでは、基本的に20年以上、または無期限の運用を定めた商品が認められており、基本的に運用が終了することはありません。ですが、繰上償還の場合は別です。

 

繰上償還とは?

繰上償還とは、何らかの形で運用が中断され、強制的に解約されてしまうことです。

投資信託には、3つの会社が関係しています。

 

委託会社…指図をもとに運用する

販売会社…商品の売買を仲介する

受託会社…運用の指図をする

 

投資信託も慈善事業ではないので、人気がなかったり、採算が取れないと判断された場合は会社側の意思で繰上償還されるときがあります。

また、運用会社が倒産した場合も繰上償還になってしまいます。ただし、商品を販売している証券会社や銀行が倒産しただけの場合は、他社に移してそのまま保有できるケースもあります。

いずれにせよ、会社側の都合で一方的に運用が終了されるのが繰上償還です。

ここでまず心配になるのは、投資したお金はどうなってしまうのかです。繰上償還が発生したとしても、お金が失われてしまう訳ではありません。

運用会社は投資していた株式や債券を売って、それのお金を顧客に返します。そのため、わずかな費用を除けば全額戻ってきます。

運用会社が万が一倒産した時も問題ありません。投資信託は基本的に分別管理がされていて、金融機関のお金と顧客のお金はしっかり分けて管理されています。

銀行に預けている預金の場合、万が一倒産してもペイオフにより1,000万円まで補償されるのは有名です。

投資信託の場合、原則として全額保証されます。そのため、繰上償還が発生してしまっても、直接損をすることはありません。

ですが、繰上償還はリスクの1つとして考えられています。それには2つの理由があるので、順に説明していきます。

 

単純に面倒

繰上償還が行われると、一定期間の猶予が与えられます。この期間であれば、通常通り売却することができます。その期間が過ぎた場合、運用最終日の時価で投資資金が全額払い戻しされます。

投資していたのに現金で全て戻ってきてしまうので、新しい投資信託を選んだりする手間が発生します。

幸いつみたてNISAであれば類似商品がたくさんあるので、乗り換え先を見つけるのは容易ですが、面倒には変わりありません。

ですが、この理由は大した内容ではありません。本題は次です。

 

枠が減ってしまう

通常の資産運用の場合、税金が発生します。配当金が出ない投資信託の場合、売却した時の利益に20%課税されます。

そのため、できるだけ売るタイミング遅らせることで、税金の支払いも遅らせることができます。あまり意味がないように感じますが、今20%払うのと、将来20%払うのでは全く違う結果になります。

ここでは詳しく説明しませんが、税の繰り延べという非常に有効なテクニックです。

ですが、繰上償還されてしまった場合、利益が出ていれば強制的に課税されてしまうので、税の繰り延べがストップしてしまいます。

つみたてNISAの場合、そもそも税金が発生しないので、あまり関係ありません。ですが、つみたてNISAならではの問題が発生しています。

つみたてNISAでは、毎年40万円の積立枠があります。一度売却してしまうと、その枠は二度と使えなくなります。

例えば、投資信託Aを毎年40万円積立していたとします。そして10年後、400万円分積立した時に繰上償還が発生した場合、手元に運用されていた額が全額帰ってきます。

仮に500万円にふえていたとしたら、500万円の現金が手元に来ます。ですが、まだ資産運用の途中なので、別の投資信託を500万円分買わなければなりません。

ですが、つみたてNISAでは一度売ってしまうとその枠は使えないので、この500万円は通常の課税口座でしか運用できなくなってしまうということです。

つみたてNISAでは、一度売ってしまうと枠が使えなくなるので、極力売らないようにすることが重要です。繰上償還は強制的に売らなければならないので、非課税で運用できなくなるという大きな機会損失が発生します。

つみたてNISAは素晴らしい制度ですが、この部分の救済制度がないのが唯一問題だと思っています。

 

繰上償還まとめ

繰上償還が起きても、直接損をすることはありません。ですが、間接的に大きな機会損失が発生します。

 

乗り換え手続きが面倒
→余計な時間と手間がかかる

強制的に売却される
→せっかくの非課税枠を無駄にする

 

前者の問題は気合で何とかなりますが、後者の問題は致命的です。せっかく非課税枠で運用しているのに、会社側の都合でメリットが大きく失われてしまうことになります。

直接損をするわけではありませんが、税金がかからないというつみたてNISAのメリットを無理やり捨てられてしまうことになり、非常に不公平です。

個人的な理由で売却した人の枠が減るのは当然ですが、運用会社の都合で売却するしかなかった人にも同じペナルティは制度としての欠陥です。

つみたてNISAでは、繰上償還が起きないように厳しい条件が付いているので比較的安心ですが、それでも20年の間に何が起きるかは予測できません。

金融庁も現在検討している部分ではありますが、現状は具体的な案は出ていません。

繰上償還による売却の場合は再度枠を利用できるようにするなど、繰上償還リスクをカバーできるような救済制度を強く希望します。

参考記事…つみたてNISAのデメリット