正しいリスクを取ること

つみたてNISA(積立NISA)は、投資信託を用いて資産運用をしていく仕組みです。

資産運用をする以上、様々なリスクを抱えることになります。ですが、長期の積立投資では、ほとんどのリスクを取り除くことができるといわれています。

資産運用をするのは大きなリスクと思われていますが、実は投資をしていないこと自体が大きなリスクです。

最も安全だと思われている現金でも、インフレや円安が進むと買えるものが減ってしまうので、実質的には大きな損です。

投資をしてもしなくても、リスクは必ずあります。そして、必要以上のリスクを抱えないようにするには、現金以外の複数の資産に分散投資する必要があります。

リスクは怖いですが、必要以上に恐れ、投資をしないことが最も大きなリスクを抱えることになることをしっかり理解していきましょう。

リスクを知ることが、資産運用の第一歩ともいえます。ここでは、為替リスクについて解説していきます。

 

為替相場とは?

為替リスクの前に、為替について解説します。

よくニュースなどで、1ドル=〇〇円なんて言葉を耳にするかと思います。これは、ドルと円の交換レートを表したもので、日々変動しています。

この交換する比率を為替相場といい、経済にも大きな影響を与えます。

現在だと、1ドル=110円くらいになることが多いようです。ドルという通貨は世界各国にありますが、特に注意書きがなければアメリカの通貨である米ドルのことを指します。

例えば1ドル=110円の時は、1ドルを得るために110円を払う必要があります。ですが、1ドル=100円になった場合は、100円を出すだけで1ドルが手に入ります。

相対的にドルの価値が下がり、円の価値が上がったので、ドル安円高といいます。海外から安くモノを仕入れることができるので、輸入品の値段が安くなることが多いです。また、海外旅行に行く場合も、同じ資金で多くのドルに両替できるので有利です。

逆に、1ドル=120円になったときは、1ドルを得るために120円も払う必要になってしまうので、相対的にドルの価値が上がり、円の価値が下がったことになります。

輸入品や海外旅行の値段が上がってしまう反面、輸出製品が相対的に安くなるので、製造業には有利に働きます。

また、外国人観光客が増えるので、日本経済にはプラスになることが多いです。

少し変な話ですが、自国の通貨の価値が下がるほど経済には好影響なので、基本的には多くの国が自国の通貨の価値を下げるような政策を取っています。

日本以外の多くの国では、意図的に通貨をたくさん発行して緩やかなインフレを起こし、通貨が安くなるような経済政策を取ってきました。

その一方、アベノミクス政策以前の日本ではあまりお金を刷ることがなかったので、デフレが続き、円高になっていました。

最近では通貨発行量を増やしてきたこともあって、全体としては円安に進んでいます。

分散投資をすると、必然と日本以外の資産にも投資するようになります。そして、基本的には円以外の通貨を使って投資することになります。

例えば、先進国株式に投資した場合、投資先の半分は米国株になります。そのため、投資額の半分を米ドルで投資しているような状況になります。その他の大部分はヨーロッパ株になるので、ポンドやユーロで投資していることになります。

そのため、円高が進むと相対的に価値が下がり、投資信託の評価額も下がることになります。円高に進んで損が出ることを為替差損といいます。

逆に、円安が進むと相対的に価値が上がるので、投資信託の評価額も上がることになります。円安が進んで利益が出ることを為替差益といいます。

いずれにせよ、株式や債券の価格だけでなく、ドルやユーロなどの為替相場によって評価額が変わってくるということですね。

 

為替リスクとは?

上記の内容でだいたい見当がつくかと思いますが、為替変動により評価額が変わってしまうリスクが為替リスクになります。

円高が進めば、相対的にドルやユーロの価値が下がっているので、円に直した場合は減ってしまうことになります。

円安が進めば、相対的にドルやユーロの価値が上がっているので、円に直した場合は増えていることになります。

いずれにせよ、変動幅を大きくすることになるので、海外への投資はリスクが大きいといわれています。

ですが、為替リスクは、長期的にはほぼ無視できることが分かっています。

なぜなら、為替の変動は、2カ国間のインフレ率の差に収束するといわれているからです。

例えば、日本の円とアメリカのドルで考えてみます。日本のインフレ率は、現在ほとんど0%です。その一方、アメリカは継続して毎年2%ほどのインフレが続いています。

 

現金を預けた場合、円ではほぼ利息が付きませんが、ドルの場合は毎年2%ほどの利息をもらうことができます。

もし円とドルの為替相場がずっと変わらないなら、ドル預金をしていたほうが毎年2%ずつ増えるのでオトクです。

ですが、現実的にはそんなおいしい話はありません。なぜなら、アメリカは毎年2%ずつインフレが進んでいるので、円に対して2%ずつドル安になっていかないと辻褄が合わないからです。

短期的には円とドルの為替相場は大きく動くかもしれませんが、最終的にはインフレ率が高いほうの通貨が安くなっていくことで、2つの為替相場はちょうどいいところに落ち着きます。

日本円と米ドルのインフレ率や利息の差は、為替変動によってうまく調整されていくということですね。

少し難しい説明になってしまいましたが、為替変動は長期投資では大きなリスクではないということですね。

つみたてNISAでは20年間という長期間を見据えて投資をするので、為替リスクを大きく取り除くことが可能になります。

 

円で取引すれば為替リスクはない?

つみたてNISAでは、基本的に投資信託を用いて投資をするので、投資する単位は全て「円」です。

外国の株式や債券を直接購入する場合、通常は手元の円を一度ドルに両替し、ドルで投資する必要があります。

勘違いされる方が多いですが、取引する通貨が円であろうとドルであろうと、背負う為替リスクは変わりません。

なぜなら、投資信託を購入した「円」という通貨は、運用会社がドルやユーロなどに両替して投資しているからです。

そして、売却するときは、ドルやユーロを「円」に戻して返しているだけです。個人がドルなどに両替する手間を、運用会社が代行してくれているだけです。

したがって、投資信託を円で買ったからといって、為替リスクがなくなるわけではありません。

例えばですが、米国株式に投資できる投資信託を「円」で購入した場合と、米国株式を直接「ドル」で購入した場合、背負う為替リスクは全く同じです。

非常に勘違いしやすい部分なので、要注意です。海外に投資する商品を買った時点で、あなたは投資対象に応じた通貨の為替リスクをしっかり背負うことになります。

裏を返せば、投資した「円」という通貨は、投資信託を通じて世界中のあらゆる通貨に分散されているということになります。

 

為替ヘッジありとは?

つみたてNISA対象の商品でも一部存在していますが、「為替ヘッジあり」となっている商品がいくつかあります。

これは、海外の資産に投資するときに、為替リスクをなくすように調整された商品であることを意味しています。

為替リスクなく海外に投資できるので有利な気がしますが、インフレ率の差によって調整をするためのコストが大きくかかるため、長期ではリターンを押し下げることになります。

また、購入した時点の為替相場が基準になるので、購入するタイミングによっては逆にリスクを高める結果になります。

長期投資では為替リスクはほぼ無視できるので、余計なコストがかかる分、当サイトでは推奨しません。

 

日本株式には為替リスクがない?

「外国株式は為替リスクがあるから、日本株式のほうが安全」という話をよく聞きますが、果たして本当でしょうか?

確かに、日本株式は基本的に円で取引されているので、為替リスクはないと考えられています。

ですが、株式とは、投資先の資産や利益の一部の権利を得ることです。日本企業の多くは、日本国内だけではなく、世界中でビジネスをしています。

日本を代表する優良企業であるトヨタ自動車は、売上や工場の半分はアメリカになっています。ということは、持っている資産の多くもドルになっているので、円高が進めば、トヨタ自動車の持っている資産も円で考えた場合は減ることになります。

つまり、トヨタ自動車の株価にも悪影響が出ることになります。また、トヨタ自動車は典型的な輸出企業なので、円高が進むと事業にも大きく悪影響が出ます。

リーマンショックが起きた直後の2009年には大幅に円高が進み、59年ぶりの赤字になりました。もちろん株価も大きく下がっています。

今日では、世界経済のグローバル化が進んでいるので、1つの企業が複数の地域でビジネスを行うことは当たり前になっています。

日本は少子高齢化が進んでいるので、今後さらに海外展開が盛んになっていくと思われます。海外でビジネスをするということは、海外との為替相場の影響はより一層大きくなっていくので、日本企業だから為替変動と無関係でいることは不可能です。

そのため、日本株式に為替リスクが全くないとはいえず、むしろ今後は為替の影響を大きく受けるようになると思われます。

したがって、「外国株式は為替リスクがあるから、日本株式のほうが安全」というのは、一概に正しいとは言えない常識なのです。

ただし日本債券については、決められた円での返済が約束されているので、為替リスクは全くないので安心してください。

 

為替リスクまとめ

為替リスクは海外投資における大きなリスクのように思われていますが、長期投資では大きな敵ではありません。

 

為替相場の意味
→円と他国の通貨の取引レート

為替リスクの意味
→円高で損失、円安で利益になる

為替ヘッジありの商品
→長期ではあまり意味がない

投資先によって決まる
→円で投資しても関係ない

日本株式の為替リスク
→間接的に大きく影響がある

 

為替リスクと聞くとあまり良くないイメージがありますが、実際はリスクだけではなく、メリットにもなります。

為替リスクは、円以外の通貨に投資することによって発生します。逆に言えば、手持ちの資金を円以外の通貨に分散することにつながります。

仮に日本がハイパーインフレになった場合、円で持っていたら紙屑になってしまいますが、ドルやユーロで持って入れば影響を受けずに資産を守ることができます。

また、為替の変動は、長期的にはインフレ率に応じた正しいレートに落ち着くという性質があるため、長期投資ではあまり影響がないことが判明しています。

一時的に大きな変動があることは避けられませんが、長期では気にせずに積立していくことが大切です。

為替ヘッジありの商品については、余計なコストがかかるうえに、為替変動による調整機能がなくなるという余計なリスクを抱えることになるのでオススメしません。

また、日本株式だからといって為替リスクがないわけではありません。為替リスクを恐れて、海外への投資を怠らないようにしましょう。

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